SCOT「シンデレラからサド侯爵夫人へ」
劇団SCOT「シンデレラからサド侯爵夫人へ」
@吉祥寺シアター
2012年12月8日~24日
構成・演出 鈴木忠志
グリム原作・三島由紀夫作
「サド侯爵夫人」目当てに行って来ました。
以前、静岡県舞台芸術センターでのSCOTの「サド侯爵夫人」(第2幕)が高評だったのに見られなくて悔しかったので。。
「サド侯爵夫人」は、役者たちの発声がすごい。ああ、これがスズキ・トレーニング・メソッドによる芝居なのね、という感じ。
全体に低く、すごみのある声で、何よりも三島のあの大量のセリフを完全に我が物にしている。
このような発声で三島演劇を語るのを前にも聞いたことがある。三条会の大川さんと、今年の春の野村萬斎演出の「サド侯爵夫人」でモントルイユ夫人を演じた白石加代子。(白石は当然か、とも思うけど、もう少し遊び心のある発声だった)。
それらは、単独の役者だったけど、今回のは、ルネ、アンヌ、モントルイユ、サン・フォンの女性たち皆がすべて同じ発声法。なんともすさまじい。。
芝居自体は、前半が「シンデレラ」、後半が「サド侯爵夫人」(第2幕)の二作品を、劇団の芝居の稽古という設定でくっつけて上演。
「シンデレラ」の方が、枠の入れ子が強くて、現実に演じている役者だと見なされる人物(夏子)-劇中で「シンデレラ」の戯曲を書いているとされる人物(夏子)-劇中のシンデレラの3重の構造に仕立てている。
舞台上手のスペースでシンデレラの劇は進行するが、
常に下手に演出家などスタッフの役の者たちが控えていて、ときどき演出をしてみせたり、舞台転換などを担当する。メタ演劇というか、異化するわけですな。
全体にコミカルに作ろうとしていて、客席からも笑いが起きていたけど、私はあまり笑えなかったかな。
「サド」の方も、芝居の稽古と劇の設定は同様で、ただ、こちらの方は長ゼリフの応酬の間は、スタッフたちはじっと座っているだけで、ちと気の毒。
それに、女性ばかりが舞台にいるはずの「サド」が、男性演出家によって支配される構図はいかがなものか、とも。
「サド」の芝居が終わったあと、演出家は「三島さんも難しいことを書くなあ・・」なんて言って笑わせてはいたけど。
「サド」の音楽は、美空ひばり。舞台は畳ばり。そこを摺り足で歩く役者たち。
とにかくうまくて、今回の変化球も面白いけど、次回は直球版の「サド侯爵夫人」をぜひ拝見したいと思いました。
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