「金閣寺」凱旋公演
「金閣寺」日本凱旋公演
・2012年1月19日(木)~22日(日)
・梅田芸術劇場メインホール
・公式ページ・東京公演は、1月27日~2月12日
(於・赤坂ACTシアター)
宮本亜門演出、森田剛主演の「金閣寺」、ニューヨークでの上演をすませての日本凱旋公演。
明日から東京公演のようですね。
もう一週間前になりますが、私は大阪で見てきました。
初日でしたが、破綻なく、完成していました。
昨年2月の初演のレビューはこちらです。
昨年に比べて、今年は輪郭がクッキリした印象を受けました。
溝口-鶴川-柏木の、少年~青年期の男3人の物語という輪郭が、昨年よりさらに前面に出されていたように思います。
溝口-鶴川の明るい親交、溝口-柏木の陰影のある関係、柏木の告白を聞く溝口を見て去っていく鶴川。
肉体的な接触も随所にあり、ホモ・エロティシズムの要素が強まりました。
それは、腐女子向けサービス・・なんていうわけではなく、小説から亜門さんが読み取ったものなのでしょう。
小説「金閣寺」は、男性のコードでも、女性のコードでも読むことができますが、伊藤ちひろ台本は、父や老師も含めて、男同士の絆、モデル・反モデルの線で芝居を組み立てています。
と同時に、前半の溝口-鶴川の交友の場面のナレーターは柏木、後半の溝口-柏木の場面のナレーターは鶴川。
3人がリレーしながら「生きよう」という結末にいたるまで、3者が究極には同一のもの、観客も含めてみんなが溝口でありうる、といった示唆も生きていました。
もっとも、芝居から受ける印象は観劇条件にも大きく左右されます。
昨年はかなり後方の座席で、よくいえば舞台全体が見渡される、逆にいえば役者の細かい表情などは見えなかったため、大駱駝艦の方々のパフォーマンスや鳳凰のホーメイに目が引きつけられました。
今回は前列中央という恵まれた席で、役者を十分に追うことができたからかもしれませんが、若い男優3人の関係が強烈に印象づけられました。
森田剛クンは、溝口を完全に自分のものにしていました。
(体格的に似てるからか、野田秀樹さんの若い頃のような発声でした)。
大東クンはピュアな鶴川を、高岡くんはニヒルな柏木が映画版の仲代さんに重なって見えました。
再演で、とにかくアンサンブルがとてもよかったと思います。
演出では、昨年版でも印象深かった、溝口が出奔して舞鶴に行く列車の中で、過去が甦えってくるシーンがとにかくスピーディ!
亡くなったはずの父がかつて上京したときと同じく列車にいて、そこから、父-有為子-脱走兵-海機の学生-敗戦時の切腹兵(これは原作にはありません)-鶴川-米兵の女-南禅寺の女・・・と死者や死に関わる者たちが連続して表れ、ホーメイの強烈な声のあと、反転して、柏木-母-副司-老師・・・といった現世で強烈に生きる者たちの系列がつづいていくあたり、見事でした。
また、いよいよ金閣に火をつける場面も、一瞬のうちに四方の壁が取れて、強烈。
つまり溝口の内界と外界の壁が壊れて広々とした世界に出ていったというイメージです。
金閣放火のあと溝口がどのような認識に至ったかは、小説では書かれておらす、解釈も分かれるところですが、宮本演出では明確に一つの解釈を提示していました。
ところで、本公演終了後の2月15日にDVDが発売されるのですね。
![]() |
金閣寺-The Temple of the Golden Pavilion- [DVD] avex trax 2012-02-15 by G-Tools |
これはどっちの公演なのでしょう?
発売時期からして、昨年の舞台なのでしょうね。
映画版の2つの「金閣寺」……雷蔵の「炎上」とATG「金閣寺」とあわせて、長く楽しめそう。
私はもちろん買います!
« 「オペラ班女」 | トップページ | 岡田美知代の跡を訪ねて »
この記事へのコメントは終了しました。
コメント