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2012/01/28

岡田美知代の跡を訪ねて

もう何年も前に、院生や田山花袋研究を志す中国の研究生と一緒に上下歴史文化資料館を訪ねた記事を載せました。
資料館は、岡田美知代の生家を改築していたもので、岡田美知代とは、田山花袋「蒲団」の女弟子・横山芳子のモデルです。
その後、縁あって、私自身が岡田(永代)美知代研究に取り組むようになり、何度か上下町の資料館にもおじゃまするようになりました。

美知代は、彼女自身も多くの小説や少女小説を書いていますが、「蒲団」の影に隠れて、今日ではほとんど知られていません。
が、少しずつ、等身大の岡田(永代)美知代を読み、研究する機運が高まってきたように思えます。
昨年初めに刊行された『新編日本女性文学全集』第3巻には、美知代の「ある女の手紙」と「一銭銅貨」の2作品が収録されました。朗報です。

4434100033 新編 日本女性文学全集〈第3巻〉
岩淵 宏子 長谷川 啓
菁柿堂  2011-02


 

ただ、まだ享受や研究の基礎となる著作リストも未整備ですし、年譜にも不明な箇所が多くあります。

私は一昨年から美知代の著作リストを作りはじめ、昨夏は本格的に、大学院生にも手伝ってもらって各地の図書館で雑誌調査をしました。結果は以下の通り。

  ・著書(単著):5冊(うち2冊が翻訳)
  ・著書(共著):1冊
  ・雑誌・新聞所収作品:205作品
  ・未発表原稿:10作品

これまで知られているより、かなり多くの作品を書いています。
今後の調査によってまだ作品数は増えるでしょうけど、とりあえずの中間報告としてこのたびの紀要に著作リストを載せました。

いまは、美知代が戦後に書いた未発表の原稿の翻字をしています。
もうすぐ〆切で、なぜ冬休みのうちに完成させておかない?! ……といういつもながらの反省はともかく、その原稿執筆のため、先々週末は上下町に、先週半ばには美知代の母校・神戸女学院を訪問させていただきました。

資料館からの帰り、上下高校へ。
正門付近に美知代の父・胖十郎の大きな銅像が建っています。

1

すみません。
逆光でシルエットしかわかりませんね。

手前に立っているのは、くっついてきた娘です。銅像の大きさがわかるでしょうか?
胖十郎は備後銀行頭取で、のちに町長にもなった人物です。
そして、要するに、「蒲団」で芳子を迎えにきた父親ですね。

銅像の前には、明治39年10月に、花袋が上下を訪ねた記念碑も置かれています。

2

饗応してくれた岡田家宛の花袋の礼状が刻まれています。
でも、この1年後に「蒲団」が掲載されて、岡田家に激震が走るわけですね~。

さて、神戸女学院に行った日は、あいにくの曇。午後からは雨で、残念ながらあまり写真が撮れませんでした。

3

曇天でも美しい!
神戸女学院のキャンパスは、昭和8年に、神戸市内の山本通りから現在の西宮市岡田山に移転されたので、美知代の時代の校舎や寄宿舎そのものではありませんが、雰囲気は伝わってきます。

私は学部と最初に勤めた大学がキリスト教系女子大だったので、この雰囲気には馴染みがあり、とても落ち着きます。
屋根ばかりか壁もある渡り廊下で建物同士がつながっていて、機能的で美しい。

神戸女学院には史料室があり、学校について種々の問い合わせに答えてくださいます。
また図書館の方々にもたいへん丁寧に対応していただきました。
そして、もちろんI様にもお世話になりました。ありがとうございます。
まだ資料の一部を拝見しただけだったので、また訪問させていただけることを願っています。

これまで取り組んできた三島由紀夫に加え、岡田(永代)美知代という新しい研究対象を得て、少しずつ臥薪嘗胆時期から脱することのできそうな年初です。

2012/01/26

「金閣寺」凱旋公演

01

「金閣寺」日本凱旋公演
・2012年1月19日(木)~22日(日)
・梅田芸術劇場メインホール
公式ページ

・東京公演は、1月27日~2月12日
(於・赤坂ACTシアター)

宮本亜門演出、森田剛主演の「金閣寺」、ニューヨークでの上演をすませての日本凱旋公演。
明日から東京公演のようですね。
もう一週間前になりますが、私は大阪で見てきました。

初日でしたが、破綻なく、完成していました。
昨年2月の初演のレビューはこちらです。
昨年に比べて、今年は輪郭がクッキリした印象を受けました。
溝口-鶴川-柏木の、少年~青年期の男3人の物語という輪郭が、昨年よりさらに前面に出されていたように思います。
溝口-鶴川の明るい親交、溝口-柏木の陰影のある関係、柏木の告白を聞く溝口を見て去っていく鶴川。
肉体的な接触も随所にあり、ホモ・エロティシズムの要素が強まりました。
それは、腐女子向けサービス・・なんていうわけではなく、小説から亜門さんが読み取ったものなのでしょう。
小説「金閣寺」は、男性のコードでも、女性のコードでも読むことができますが、伊藤ちひろ台本は、父や老師も含めて、男同士の絆、モデル・反モデルの線で芝居を組み立てています。

と同時に、前半の溝口-鶴川の交友の場面のナレーターは柏木、後半の溝口-柏木の場面のナレーターは鶴川。
3人がリレーしながら「生きよう」という結末にいたるまで、3者が究極には同一のもの、観客も含めてみんなが溝口でありうる、といった示唆も生きていました。

もっとも、芝居から受ける印象は観劇条件にも大きく左右されます。
昨年はかなり後方の座席で、よくいえば舞台全体が見渡される、逆にいえば役者の細かい表情などは見えなかったため、大駱駝艦の方々のパフォーマンスや鳳凰のホーメイに目が引きつけられました。
今回は前列中央という恵まれた席で、役者を十分に追うことができたからかもしれませんが、若い男優3人の関係が強烈に印象づけられました。

森田剛クンは、溝口を完全に自分のものにしていました。
(体格的に似てるからか、野田秀樹さんの若い頃のような発声でした)。
大東クンはピュアな鶴川を、高岡くんはニヒルな柏木が映画版の仲代さんに重なって見えました。
再演で、とにかくアンサンブルがとてもよかったと思います。

演出では、昨年版でも印象深かった、溝口が出奔して舞鶴に行く列車の中で、過去が甦えってくるシーンがとにかくスピーディ!
亡くなったはずの父がかつて上京したときと同じく列車にいて、そこから、父-有為子-脱走兵-海機の学生-敗戦時の切腹兵(これは原作にはありません)-鶴川-米兵の女-南禅寺の女・・・と死者や死に関わる者たちが連続して表れ、ホーメイの強烈な声のあと、反転して、柏木-母-副司-老師・・・といった現世で強烈に生きる者たちの系列がつづいていくあたり、見事でした。

また、いよいよ金閣に火をつける場面も、一瞬のうちに四方の壁が取れて、強烈。
つまり溝口の内界と外界の壁が壊れて広々とした世界に出ていったというイメージです。
金閣放火のあと溝口がどのような認識に至ったかは、小説では書かれておらす、解釈も分かれるところですが、宮本演出では明確に一つの解釈を提示していました。

ところで、本公演終了後の2月15日にDVDが発売されるのですね。

B006QGXMGG 金閣寺-The Temple of the Golden Pavilion- [DVD]
avex trax  2012-02-15

by G-Tools

これはどっちの公演なのでしょう?
発売時期からして、昨年の舞台なのでしょうね。
映画版の2つの「金閣寺」……雷蔵の「炎上」とATG「金閣寺」とあわせて、長く楽しめそう。
私はもちろん買います!

2012/01/22

「オペラ班女」

Hanjo1

HIROSHIMA HAPPY NEW EAR OPERA Ⅰ
(広島の新しい耳)
「オペラ班女」
・台本・作曲・音楽監督/細川俊夫
・原作/三島由紀夫「班女」
・英訳/ドナルド・キーン
・演出/平田オリザ
・指揮/川瀬賢太郎
・演奏/広島交響楽団
・出演/半田美和子(花子)・藤井美雪(実子)・小島克正(吉雄)
・2012年1月20日(金)19時/1月22日(日)15時
・アステールプラザ中ホール能舞台
・上演時間 1時間40分
公式ページ

見てきました。「オペラ班女」。

2004年にフランスで初演、BSで少し紹介されて、ぜひ見たいと思っていました。それが広島で上演されるなんて!!
広島男子駅伝のゴールの時間帯でごったがえす平和公園前を通って、いざアステールへ!

全6場。
もともとエクサン・プロバンスの依頼で制作されたということもあって、歌は英語。
今回はセリフの部分は日本語でした。

能舞台の左手・脇正面の部分がオーケストラ・ピット。
舞台は正面鏡板の前に屏風。花子が部屋で休む場で、この屏風に隠れます。
屏風の前にロッキング・チェアが一つ。床には、裂かれた新聞紙が敷きつめられてますが、きわめてシンプルな作り。
キャストは洋服を着て、能舞台なのであしもとは足袋。

現代音楽独特の不思議な音色にあわせて、芝居が進んでいきます。
音楽は決して全面に出ず、背景という感じ。
実子の不安から、喜びへの変化。
花子の「狂気の宝石」の美。
吉雄の最初の勝ち誇った様子から、逃げ出していく様への変化。

オペラはあまり見ることはありませんが、とても演劇的な作りだと思いました。
とくに、吉雄が帰ったあとの花子の微笑みは、もしかして狂気のふりをしているだけ?と感じさせられたほど。
現実の吉雄を拒否すれば、ずっと待ち続けていられるのですから。
また「待つ」ことをつづけさせてくれる実子のもとにいられるのですから。

プレトークで細川さんは、平田オリザさんを演出に迎えて、演劇としてのオペラの可能性を追求したかったと話しておられました。
また自分の狙いは、種々のぶつかりあいであると。
・人間同士の、愛・嫉妬などのぶつかりあい。
・現実の響きと夢幻世界のぶつかりあい。
・セリフの日本語と歌の英語という、言語のぶつかりあい
・能舞台という日本と、西洋の楽器によってかなでられる音楽のぶつかりあい

アフタートークで、オペラ初演出の平田さんは、演劇のワークショップを行なって、キャストばかりか指揮の川瀬さんもずっと参加してセリフも練習されたといった挿話を披露。
そして、現代音楽については、単純な感情移入を妨げ、気持ちよくなる寸前に不協和音が入って、いわゆる「異化」効果があると話していました。
また、ディベートの部分が長いのが三島作品の特色であるとも。

私自身は、「近代能楽集」の自由度の高さが印象に残りました。
「サド侯爵夫人」や「鹿鳴館」はある程度、上演の形が決まってしまいます。それに対して、「近代能楽集」は、美輪さんのようなゴージャスの舞台も、蜷川流の解釈も、三条会のような実験的な演出も、そして今回のオペラ版でも、どのような味付けを行なっても見ることができる、変幻自在な作品だと思います。
英語の歌も、背景の現代音楽も、全く邪魔せず、作品自体を深めていく。

また、セリフが日本語、歌は英語、という2言語の切り換えも、思ったより違和感なく聞けました。
アフタートークで細川さんは、最初から歌とセリフを分けて作ったわけではなく、キーンさんの英語の台本をみながら作曲していき、うまく音楽にしずらい箇所をセリフに回し、あるいは音楽的な流れと会話とのメリハリを考えながら作っていったと話しておられました。
もともと三島の芝居そのものが詩劇なのですから、セリフと歌の区別はないとも言えます。

今回は広島のみの公演だけど、決して地方向けとは思っていない、国際的なものを目指しているのだ、とのお話でしたが、三島演劇の可能性を広げる貴重な試みだと思います。
再演を期待します。
その点でも、客席が埋まっていて嬉しく思いました。

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    ワーグナー:名演集

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