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2010/06/24

映画「祝の島」(ほうりのしま)

Hourinosima

昨夜(23日)、横川シネマ!にて、映画「祝の島」を見てきました。
纐纈(はなぶさ)あや監督のドキュメンタリー映画です。

山口県上関町の祝島(いわいしま)。瀬戸内海に浮かぶ祝島のすぐ近くに原発の計画が持ち上がり、島の人々は28年間、原発反対を叫んでいる。
・・・というと、固っ苦しい映画のように思われるかもしれないけど、見た印象は違う。笑えるところも多いし、海と山(棚田)といった瀬戸内の島の自然とともに暮す人たちに触れられて、とてもよい時間が過ごせました。

タイの一本釣りをしたり、棚田を耕したり、定期船で荷物を運んだり、、といった、地に足のついた地道な暮らしをしている普通のおじさん・おばさんたち。
それが、町議会で声をあげ、デモをし、中電に海上から地上から抗議する。
観念的ではない、自分たちの生活の場である、恵みの生れる場である海を汚したくないという思いがあっての行動。

祖先が肩のあたりにいて、のりうつっているような気がした、という言葉や、子どもたちのためにきれいな海を残したい、という言葉。
命の連鎖みたいなことを言われると、私はいつもならば警戒してしまうのだけど、島の自然や暮らしを見ていると、とても納得できる。
海上からピケを張って「命を懸けている」と抗議する島の人々に、中電の社員は「安全に作業をするために、進路をあけてください。妨害行為は違法な行為になります」といったマニュアルを繰り返すのみ。
彼ら一人一人にも生活があるのだろうけど、人間性(自分で判断し、人として生きる力)を欠いたデクノボーにしか見えない。

おじいさんが作った棚田を耕し、読み書きができなかったおじいさんの歌を岩に刻みつける平さん。
名人としか言いようのない一本釣りを見せてくれる英一さん。
生徒は3人だけ。蛭子3人兄弟の末っ子の小学校入学式。
「後家楽、後家楽」と言いながら、半日がかりで親族や友達のお墓参りをする富美子さん。
毎晩、独り者の老人たちが富美子さんの部屋の炬燵に集まってくる、まったたとした語らい。
Uターンして戻ってきた橋本夫婦に、人のよさそうな町議会議員の「としぼう」くん。
4年に一度の「神舞」のときに、人口500人の島が、戻ってきた家族や観光客で3000人にふくれあがるさま。
毎週のデモ行進。
・・・いくつも、印象的なところがあったけど、やはり、島でたった一人の「女漁師」の民子さんが、催しの場に振袖姿で闖入して踊る場面が圧巻。人を驚かせる精神が脈打っている。終わるやバイクで帰っていく姿もカッコいい。

富美子さんが、昔は島に芝居が来て、よく見ていたし、自分も歌い踊っていたと話していた。
平さんは、棚田の小屋でランプの光の下、字が読めないおじいさんに小説を読んであげた、それがなによりの楽しみだったと話していた。
演劇や小説の力は、やはり大きい。

ところで、上映前には、纐纈(はなぶさ)あや監督が舞台挨拶。まだ30代のキュートな女性監督だ。
「私はジャーナリストではないから、自分が好きなものだけを撮りました」と話していた。

原発によって島が二分してしまったということが、何度も繰り返される。
しかし、原発推進派の島民は映画には出てこない。反対派の島民を撮影している監督に、推進派が撮られることを嫌ったのか、それとも、監督自身の好きなものを撮った結果なのか。
高齢化・過疎化は確実に進行しているなか、島に病院はあるのだろうか・・・などということも気になりながら見ていたのだが、そういったものは映画には入ってこない。纐纈監督が撮りたいものは別にあったということ。

ドキュメンタリーは、映す者と映される者との関係が重要だ。
その点で、この映画の距離感は絶妙だった。
大晦日の夜、富美子さんの家の炬燵の老人たちの様子を見られたことは、奇跡だと思えた。

映画を見ていて、何度も三島由紀夫の「潮騒」を想起させられた。
「潮騒」の歌島のモデル となったのは、神島。神の島だ。
もう一つの「潮騒」の島、現代の姿が、祝島なのかもしれない。
現代の神の島・祝の島(ほうりのしま)の人々は、豊饒な自然に囲まれ、地道な生活でありなが ら、社会的な視野で行動する力を持っている。
原発によって村が二分されたことで、八幡神社は詣でる者がいなくなった。4年に一度の祭りも途絶えた時期もあり、その後再開された。
神や自然との関係をとらえなおし、社会に声をあげていく。
「潮騒」が外の世界の語り手によって島の姿が語られたように、「祝の島」の姿を東京から来た若い女性が映しとっていったのだ。

そして、上映後には、1週間日替わりのトークショー。
昨日は、ひろしま女性学研究所の高雄きくえさん。

高雄さんは、「祝の島」を「シスターフットの島」(女の友情の島)ととらえていた。
富美子さんが「後家楽」と語ったり、女同士が群れている場面が多いこと、富美子さんの家に集まってくるのも女性たちで、平さんは入れてもらっているのだということ。
さすがの見方ですね。
たしかに、結婚している女も、一人の女も、分断されることなく、女性同士の連帯がとても感じられた。
高雄さんは、それは原発で島が2分され、28年間の間に人間関係が再編された結果ではないかと話していた。

また、広島と祝島との地理的関係にも触れて、これまで広島・呉・岩国の軍事三角地帯に注目していたけど、原発は軍事にも関わる。
広島と岩国の延長線上に位置する祝島と、広島と連帯を説いていた。

奇しくも、昨日・6月23日は、沖縄慰霊の日。そして、60年安保条約の日。かつ男女共同参画基本法成立の日で、筑紫哲也さんの誕生日でもあるらしい。
暴力とジェンダーを考えるのにふさわしい日だったということか。

終了後、ロビーで、高雄さんたちとお話。2週間前に祝島に行かれたとのこと。
それから、女性学研究所の本を購入。(MCをされていた柿木さんの『共生を哲学する』と、『平和構築ってなんですか?』の2冊)。
また、物販で、祝島の生産物を買いました。びわと、びわ茶と、寒干し大根。
びわは甘くて、すごく美味しい。びわ茶もどんな味か楽しみ。

ともかく、ぜひ一人でも多くの方に見ていただきたい映画です。
広島では、横川シネマ!で、トークイベントは25日で終わりますが、その後も1日4回上映中(10:00/12:00/16:30/18:30)。
東京では、ポレポレ東中野で、7月までトークイベントもあるようです。

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コメント

はじめてコメントさせていただきます。
今日、「祝島(ほうりのしま)を見てきました。ドキュメンタリーが好きで、この撮影の前年に「氏本農園」を訪ねて以来、
気にかかっていた島なのです。
後に続くものに何を遺すのか・・・あの笑顔と美しい島を遺せないのなら、この日本を日本らしく遺すのはもう無理かもしれない・・・と、ふと。
失礼ながら、琴線にふれるものが少し似ているので今後も是非読ませて下さいね。

OZさま、こんにちは。コメント、ありがとうございます!
出張していたので、返事が遅くなり申しわけありません。
祝島に行かれたことがおありなのですね! 私は映画でしか知らないのですが、美しい島と素敵な方々なのでしょうね。
島を支援することは、私たち自身の生とも関わることで、では、私たちに何ができるのか? まずは映画を一人でも多くの方に見ていただきたいなあと願っています。
どうぞ、これからもよろしくお願いいたします。またいらしてくださいね。

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