庄野潤三さん死去
![]() |
プールサイド小景・静物 (新潮文庫) 新潮社 1965-02 by G-Tools |
数日前の記事ですが、貼っておきます。
芥川賞作家・庄野潤三さん死去
(2009年9月22日13時33分 読売新聞)小説「夕べの雲」「ザボンの花」など、かけがえのない家庭の姿を平明に描いた作家で日本芸術院会員の庄野(しょうの)潤三(じゅんぞう)さんが、21日午前10時44分、老衰で死去した。88歳だった。
告別式は28日午後1時、川崎市多摩区南生田8の1の1春秋苑白蓮華堂。自宅は同区三田5の9088。喪主は妻、千寿子さん。
大阪市生まれ。父、貞一氏は大阪・帝塚山学院の創設者、兄、英二氏は児童文学者。海軍少尉に任官し、復員後は教師や、放送局のディレクターの傍ら 同人誌に「愛撫」などを発表、注目された。55年、家庭の幸福と、そこに潜む危機を描いた「プールサイド小景」で芥川賞を受けた。
安岡章太郎、吉行淳之介、小島信夫さんらとともに「第三の新人」と呼ばれた一人。日常を静かに見つめ、人生を洞察した「静物」、66年に読売文学 賞を受けた「夕べの雲」、71年野間文芸賞の「絵合せ」など、家庭小説を発表した。57年にロックフェラー財団に招かれ、米国で過ごした1年を描く「ガン ビア滞在記」など紀行でも知られた。
晩年も「メジロの来る庭」など、孫の成長や近所づきあい、自然を慈しむ温かな作品を書いた。3年前に脳こうそくで半年入院し、自宅で療養を続けていた。
ちょうど「プールサイド小景」論を先輩との共著として投稿中で(12月に掲載予定)、最近、庄野さんの作品を通読して色々と考えていたので、ご逝去の報に驚いています。
三島由紀夫が庄野さんの「静物」について、「日常生活直下の地獄」と評しましたが、これは初期庄野作品についていまも有効だと思います。
また、三島は、『豊饒の海』「天人五衰」創作ノートにおいても、構想を練るなかで、
一、片隅の小市民的な賢明な青年の幸福(庄野の作品)
と、一つの典型的小説として名前をあげています。
『夕べの雲』をどのように読むのか(江藤淳や村上春樹の言う「家父長」としてのあり方の内実)、あるいは、近年の嫌なものは見ない、書かない、という庄野作品の姿勢については評価の分かれるところで、もっと議論されてよいはずです。
ともかく、第三の新人のなかでも、詩的な感性と穏やかさとで傑出した作家でした。
ご冥福をお祈りいたします。
最近のコメント