映画「MILK」
あちこちで評判を聞いたり、「もう見ました?」と挨拶代わりのメールをもらったりしていた、映画「MILK」。
広島では夜1回だけの上映になり、終了間近っぽいので、あわてて会議のあとで見てきました。
1978年、アメリカ。ゲイであることをカミングアウトしてサンフランシスコ市の公職についたものの、わずか1年後に暗殺されてしまったハーヴィー・ミルク。
暗殺されたときのために録音されたテープを軸に、半生が示されていく。
パートナーとの愛と別れ、(なんでこんなダメな相手に、と思っちゃうけど、それが人間なのだろう)。いくたびもの選挙への挑戦、熱いムーブメント、政治の世界のかけひき、権力、そして死。
熱い時代。カミングアウトを呼びかけたミルク。脇をとりまく人々によって伝説と化したのもよくわかるし、ミルクと市長を殺害した同僚議員のダン・ホワイトの嫉妬と焦りにいたるまで、きちんと描かれていた。
主演のショーン・ペンばかりではなく、若手の有望な俳優が揃っていた。とりわけ、最初のパートナーのスコット役のジェームズ・フランコは魅力的だったし、レズビアンの選挙参謀アン役のアリソン・ピルがよい味を出していた。
また、要所に当時のフィルムが織りまぜられていた。冒頭、店に踏み込んだ警察にクラブの客たちは顔を隠していた。だからこそ、ミルクの「クローゼットから出よう」という呼びかけが大きいのだ。
映画の最後、ミルクをとりまいた人たちの現実のその後の人生の写真が写される。役者たちがよく特長をつかんでいることにも驚いたが、ミルク亡きあと、それぞれの道を同じように生きていく人たちの姿が写されたことによって、これは現実の話なのだと納得させられた。
それにしても、ほんの数年前まで、アメリカでもこの国でも、同性愛を「病気」だと見なしていたことにガクゼンとする。
そして、「ボーイズ・ドント・クライ」などもそうだったけど、自由の国アメリカは、半面、マイノリティへの憎悪・保守反動もすさまじい。陰湿に影で差別する国もいやだが、自身と違う者を殺してもかまわないと思える社会も間違っている。
それにしても、今夜の観客は5人だけだった。。これまた間違ってる・・!
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MILK 写真で見るハーヴィー・ミルクの生涯 伏見 憲明 安斎 奈津子 AC Books 2009-05-01 by G-Tools |
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