ゲキ×シネ「朧の森に棲む鬼」
研究会のあと、最終日の上映にすべりこむ。映画館で映画を見るのは、久しぶり。
今回のゲキシネツアーのラインナップのうち、ナマでもゲキシネでも見たことがなかったのは、「朧の森に棲む鬼」だけだったので、間に合ってよかった。
3時間以上の長さだけど、全く飽きさせない、いのうえ歌舞伎のうまさ。
精霊との契約、裏切りの末に王に成り上がるも破滅、と、ストーリーとしては、メタルマクベスに似ているのだが、マクベス夫婦が亡者たちに内面から崩される弱さを持っていたのに対して、今回、染五郎演じるライは、自分以外に信ずる者もいない救いようのない全くの悪人。
真悪人をやらせたら天下一品なのが勘三郎さんだが、あれは愛嬌があるだけに憎めないのだけど、染五郎さんはひたすら凄味がある。それでいて何ともいえない色気のある悪党ぶりが見事。
古田新太や高田聖子はじめ、脇を固める役者陣も達者で、完成度の高い作品だった。
小須田さんが、あんな3枚目だとは。。
ゲキシネは、芝居のもっとも見やすい座席で見るよりも望ましく、引きとアップのバランスや、アングルも理想的。芝居を観た人も楽しめる、という謳い文句はダテではない。
ただ、終わったあと、舞台挨拶する役者の映像を見ると、やっぱり映画(影)に過ぎないと思ってしまうし、役者や他の観客とともに一つの舞台を共有しているという一体感もないのが淋しい。
でも、少なくとも、家でDVDを見るよりはよほどよい。もはやなくてはならない媒体だ。
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