新派「鹿鳴館」
・2008年6月6日-29日
・新橋演舞場
・作:三島由紀夫
・演出:戌井市郎
・出演:水谷八重子(影山朝子)、市川團十郎(影山悠敏)、西郷輝彦(清原永之輔)、波乃久里子(草乃)、英太郎(大徳寺季子)ほか
そのうち感想を、、と思っているうちに、もう明日が千秋楽なので、観たという記録だけ。
新派というのは、不思議なお芝居だ。旧派=歌舞伎に対しての新派だけど、新劇からすれば旧劇で、小劇場以降は新劇すら旧劇に見えるいま、歌舞伎や新劇界からの客演によって公演していることからも、とても微妙な位置にある。
團十郎の現代劇を私は初めて観たけど、どこまでも團十郎だった。
團十郎が影山伯爵を演じているというより、我々は、助六の團十郎を見るように、影山伯爵の團十郎を見ているのだ。歌舞伎と同じ演技の質で、当初、影山伯爵のウラのある悪は團十郎に向かないのではないかと思いつつみていたのだけれど、途中からそんなことはどうでもよくなり、影山の團十郎として見ていた。凄まじい存在感。
これに対して、清原の西郷輝彦は典型的な新劇芝居で、リアルに演じていて、両者の芝居は全く異質。とにかくセリフのスピードからして全く違う。團十郎は歌舞伎のまま、間をとる。
二人が同時に登場するのは最終場までないのだけど、それにしても、この異質な芝居がでもその二つが八重子や久里子を間に入れることで並立するところが、面白い。
女形の英太郎も含めて、不思議としか言いようのない芝居の質だけど、華やかで、和装・洋装の着慣れていて、「鹿鳴館」の舞台としては劇団四季のものよりは私は良かったと思う。少なくとも、舞台を見る楽しみがたっぷりとあった。
八重子は朝子を自分の持ち役としており、戯曲の含み持つ、男VS.女の対立劇をじっくりと見ることができた。鹿鳴館の夜会での華やかなダンスシーンをたっぷりと見せてくれたのもよかった。
欲を言えば、最後の伯爵と朝子のダンスをもう少し見たかった。二人が踊り始めて、「ワオ、團十郎のワルツ!」と身を乗り出そうとしたところで幕だもの。
新派120年記念公演ということで、カーテンコールのときに歌舞伎の口上に似た挨拶があり、日替わりの特別ゲストのスピーチも。(私が観た日は、小川真由美がゲストだった)。
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