サロン劇場「薔薇と海賊」
・2007年11月3日(金)-9日(金)
・紀伊国屋ホール
・作:三島由紀夫、演出:村松英子
・出演:村松英子・大出俊・伊藤高・若柳汎之亟・丸山博一・神保共子・村田美佐子・村松えり・鹿内寛子・野村万蔵
・上演時間:2時間40分
・シアターガイド→●、朝日コム→●
レイクサロンの前に、東京へ。
「薔薇と海賊」を見るのは初めて。
三島戯曲のなかではさほど上演される芝居ではないが、今回、これは三島にとって意外に大切で出来もよい戯曲だと思った。
それは、三島の死の直前に上演された芝居であり、三島が二幕の帝一の「王国なんてなかったんだよ」というセリフを聞きながら泣いていた、などという挿話によるのではない。
現実と虚構世界という三島作品の王道のテーマが据えられ、そして、男を拒む女という性の問題も大きいこと。しかも、コメディとして、よくできているからだ。
村松英子さんにとっては、浪漫劇場の舞台以来、37年ぶりの「薔薇と海賊」。場所も同じく紀伊国屋ホール。演技にも意気込みが感じらた。本当に再演を熱望していた舞台なのだろう。
ただ、ちょっとセリフが不安定なところが何カ所かあって、残念。これだけ大量のセリフだから無理もないのだけれど。
千恵子役の村松えりさんが、とてもよかった。
主演の村松英子さんに合わせてだろう、全体に、戯曲の設定よりも役者の年齢がかなり高い舞台になってしまっていた中で、彼女の若さ・清新さは本当に貴重。
楚々として美しく可愛らしく、コメディエンヌとして芝居を盛り立てていた。
「薔薇と海賊」は喜劇なのだ。
セットは、グレーを基調としたロココ風。
大団円の「月のお庭」の歌とともに、ジャラジャラ魔やマフマフなどの虚構の者たちが入ってくるシーンは、着ぐるみなどではなく、何もない・何も入ってこないところに帝一が話しかけるという演出で、つまり完全に幻想として扱っていた。創作上の者たちをちゃんと見せてほしかった気もするけれど(『美しい星』などと同じように)、これはこれでよかったのかな、とも思う。それでこそ、楓の最後のセリフ「私は決して夢なんぞ見たことはありません」が生きてくるから。
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