「宝塚BOYS」
・2007年7月17日(火)19時~
・広島アステールプラザ大ホール
・原作:辻則彦、作:中島淳彦、演出:鈴木裕美
・出演:葛山信吾、吉野圭吾、柳家花緑、三宅弘城、佐藤重幸、須賀貴匡、猪野学、初風諄、山路和弘
敗戦直後、宝塚歌劇団に男子部が創設された。
新しい娯楽の世界の星になることを夢見て入団した7人の男たち。
──史実をもとに創作された、明日を夢見て懸命に生きる男たちの、コミカルで切ないドラマ。
7人のBOYSたちは、軍隊経験があったり、出征した父親の生死が不明であったり、長崎の原爆を目撃したり、それぞれに戦争による深い傷を負っている。
戦後の新しい社会と、宝塚男子部と重ね合わせて、懸命にダンスや歌のレッスンに励むものの、大劇場の舞台に立つ夢は、かないそうで何度も立ち消える。
そして、9年後、男子部解散が決まる。(これが敗戦の玉音放送と重ねられる。彼らは、二度、敗れたのだ。)
舞台は、練習室と寮の場面が交互に繰り返され、練習はするものの、女の園の宝塚で自分たちは必要とされているのか、本当に舞台に立つ日が来るのか、という疑心暗鬼が繰り返される。
徹底した抑圧状態の中に置かれている。
それだけに、最後、彼らが長い間夢見ていた舞台の夢想場面は、本当に晴れやかだった。
大劇場の大階段を背景に、スポットライトを浴びてのダンス。レビュー。歌。
羽を背負って、大階段を降りて来るシーンでは、会場からどよめきもおきた。
また、男子部解散のときの、「実力や、運命ではない。ここが宝塚だからだ」という説明。彼らは、自分たちではいかんともしようのない世界の中に入り込み、力尽きてしまったわけだ。
「宝塚BOYS」は、女の園に参入しようとした男性たちが疎外される話だが、一般的には男社会の中に参入しようとした女性たちが抑圧されるわけで、実に意味深な物語でもある。
キャストは、みんな味があり、ダンスの練習は大変だったんだろうなあ、と、しのばれた。
吉野圭吾のダンスが抜群。(「SHIROH」にも出ていたのね)。
そして、花録。ピアノは弾くは、マルチな活躍。こんな落語家がいるのだろうか!
紅一点の初風諄とベテランの山路和弘もしっかりと締めていて、いいアンサンブル。
そして、鈴木裕美の演出もみごと。
十分に笑いをとりつつ、人生の不条理さと、にもかかわらず懸命に夢を追う男たちの姿を、それぞれの人生とキャラクターを描き分けながら示していた。
舞台が終了して、カーテンコールが何回あったことか。
人生に報われない思いを抱きながら、夢を見つつ励む姿が、観客の心のひだを揺さぶったのだろう。
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男たちの宝塚―夢を追った研究生の半世紀 辻 則彦 神戸新聞総合出版センター 2004-12 by G-Tools |
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» 「宝塚BOYS」よ、永遠に・・・感動をありがとう! [bobby's☆hiro(夢を伝える紳士)のシネプラザ]
*「宝塚BOYS」ラスト記事なんで公表します!
「柳家花録さん」との2ショット!!!
花録さん最高の笑顔なのに
私目は緊張のあまり強張っています(反省)
とうとう「宝塚BOYS」が
終わってしまいました!
原作者 辻則彦先生をはじめ
千秋楽の感動は伝わってきました。
ひとつの作品で
関係者一同に感動を与えた
すばらしい作品でした。
先日fm宝塚で放送された内容も
感動的でした!
宝塚映画祭のイベントで
「すみれの花咲くころ」を
歌唱する
元男子部の歌声を聴いて
涙が出てきました。
リー... [続きを読む]
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