映画「蟻の兵隊」
池谷薫監督『蟻の兵隊』
敗戦後、4年間も中国山西省に残留し日本軍兵士として闘った人々。
国は軍としての残留を認めず、兵士たちが勝手に残ったとし、彼らは、戦後60年ちかくたって裁判を起こした。
自らを「蟻の兵士」と呼ぶ彼らの一人、奥村和一さんを追うドキュメンタリー映画である。
長い時によって薄れゆく記憶と亡くなって消えていく証人。
激しい怒りを保ちつつ、自分たちは軍の命令によって残留させられたのだと主張する。
澄田第一軍司令官と中国国民党の閻錫山との密約の証拠を、中国まで求める。80歳とは思えぬほどの精力的な姿。
映画のもう一つの軸は、奥村さんの、自分は人を殺したのだ、という消えぬ思い。軍隊とは殺人マシンを養成することなのだという強い主張がある。
初年兵の教育の仕上げとして、銃剣で中国人を刺殺させられた消えぬ記憶。その現場に60年後に立つ。
また、戦後「鬼」と題した作文で自分が無辜の民を殺戮した様相をつづった本人が、奥村さんに作文のコピーを渡されて読むときの表情。全く忘れていた、しかし、確かにそうだった、と言う。
むごいことだ。
奥村さんは、結局、映画のなかで、妻にその事実を告げることができなかった。
まさに戦争の被害者であり加害者でもある奥村和一さん。そして多くの兵士たち。
奥村さんの表情や姿は、映されるごとに変って見える。
毅然とした姿と、老い弱った老人と。
しかし一貫して感じられたのは、一人の人間の、真実を明らかにしたいという不屈の意志の力だった。
映画としては、最初のうち、音声が聞き取りにくかったのが、やや残念。万全のセットをして撮るタイプの映画ではないから仕方のないところもあるのだけれど。
しかしそんな不満は小さなもの。「ナヌムの家」もそうだけど、優れたドキュメンタリーを見ると、映画の力の強さを感じる。ぜひたくさんの人に見ていただきたい。
さて、私が見たのは、学生による自主上映会で、受付に私の授業をとっている学生たちもいた。
赤字になっているのではないかと、とても心配。もっとカンパすればよかった。
がんばれ!
自主上映会は明日もあるので、ぜひ足を運んでください。
・27日(土) 13時30分~15時11分
(上映後、奥村さんと池谷監督のトークショーもあり)
・於・広島大学サタケメモリアルホール
・料金 学生(前売 500円、当日 800円)
一般(前売 1,000円 、当日1,300円)
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〔2007.7.2 追記〕
奥村さんが病院を訪ねる背景について書かれたブログがありました。
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