「かもめ食堂」
娘がキャンプに行っているので、ダンナと映画を見よう、ということに。
昨日は、研究室に来た学生さんたちに、「今おすすめの映画は?」と聞きまくりましたよ。複数回答は、「パイレーツ・オブ・カリビアン」と「M:i:Ⅲ」。やはりハリウッド強し。「明日からなら、「ゲド戦記」でしょう」とのこと。
ただ、多かったのは、「映画は見に行きませんねー」というの。文学部の学生なんだから、映画ぐらい見ようよ。
で、ダンナと相談の末、結局、昨夜われわれが見たのは、まったく学生さんたちの口からは出なかった「かもめ食堂」でした。すみません・・・。まったりしたかったのです。^_^;
フィンランドはヘルシンキにて、おにぎりがメインの食堂「かもめ食堂」を開くサチエ(小林聡美)。無目的のまま旅に出て、サチエの食堂を手伝うミドリ(片桐はいり)。さらに、空港で荷物が出てこないため滞在することになるマサコ(もたいまさこ)が加わる。
まったく客が来なかった食堂だが、日本かぶれの青年トンミが最初の客となり、遠巻きにして敬遠ぎみだった3人のフィンランドのおばさんたち(いい味出してた!)もシナモンロールの香りにつられてドアを開け、次第に地元の人たちが集ってくるようになる。・・・
大人の女のメルヒェンといった趣。客が全くいなくても、毎日きっちり準備をして、店を開けるサチエの規則正しさ。しゃっちょこばってはいなくて、おおらかなのだけど、筋を通すところは、とても気持ちいい。
「女の自立」なんて大上段にふりかぶらず、等身大で、でも、スクリーンから、ゆったりとしていて、きちんとした、そうした気持ちのよい空気を感じさせる。
小林聡美が画面に出ると、いつもそうした心地よい空気が流れる。本当にいい歳のとりかたをした女優になったと思う。
「転校生」(授業を含めて、何度見ただろう! 尾道に行くときには、これと古典中の古典「東京物語」は必ず見ておくべし!)の頃のはじけるような感じもよかったけど、そのよさを保ったまま、うまく歳を重ねてきた。(「転校生」といえば、冬クールのドラマ「神はサイコロを振らない」で、尾美としのりと小林聡美の二人が同じ画面に出たときには、感慨深いものがありました)。
「すいか」もよかったし、性を感じさせない独特の空気感は、この人ならでは。
そして、小林・もたいの「やっぱり猫が好き」コンビ。ダンナが、「この二人の間に入ると、片桐はいりがまともな人に見える」と言っていたけど、しみじみとした味わいがあって、でももちろん枯れていなくて、いいなあ。
ただ、ああいった自由さを、私は失ってしまった、と思わされたのも事実。子どもがいて、固定の職をもち、あくせく生活し働いているわが身を顧みると、映画の世界の、北欧のピカピカに磨かれた厨房でキチンとした料理を供し、仕事が終わればプールで泳ぎ、寝る前に合気道の型をさらう、という生活ぶりは、あまりに対極的。
映画の観客の大半はそうだろうけど、でも対極にあるからこそ、自分が失ってしまった夢や筋の通った生のようなものを見せてもらって代償とするのかもしれない。
とにかく、映画を見ていて、非現実すぎて、何これ?と不愉快にさせられるようなことは、全くなかった。心地よい空気感でした。
終演後、ダンナは、サウンドトラックCDを買っていました。(で、私も今、聞きながら書いてます。アルバム自体はとても短いけど、いい感じ)。ダンナは、さらに、原作も買えばよかった、と後悔し、本屋で買う、と申しております。ときどき思いがけない嗜好をかいま見せてくれる人であります。
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かもめ食堂 群 ようこ 幻冬舎 2006-01 by G-Tools |
シネツインは金曜日がレディースデーということもあったのでしょう、圧倒的に女性客ばかり(男性はダンナともう一人、二人だけ)。女性の方が感情移入しやすいだろうけど、うちのダンナの例もありますし、男性にも案外よいかも。お勧めです。
とにかく、映画を見て、マリメッコなどの北欧プリントのブラウスが着たくなりました。
と言うより、フィンランドに行きたくなった!
おにぎりも食べたくなったし、鮭の焼いたのや、トンカツ(サクっと切るところが最高)や鶏の唐揚げの美味しさを再確認したくなりました。
*シネツイン2で、8月25日まで。
この夏、シネツイン/サロンシネマは、「かもめ食堂」と「ハチクロ」に賭けてる感じですね。
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かもめ食堂 荻上直子 小林聡美 片桐はいり バップ 2006-09-27 by G-Tools |
*予告編の中では「ゆれる」。
猛烈に見たい。なぜ広島公開は9月なんだ?! 遅すぎるぞ。
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