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2006/05/29

劇団四季「鹿鳴館」

・作:三島由紀夫
・演出:浅利慶太
・日下武史(影山悠敏伯爵)、 野村玲子(朝子)、末次美沙緒(大徳寺侯爵夫人 季子)、岡本結花(顕子)、広瀬明雄(清原永之輔) 、田邊真也(久雄)、田代隆秀(飛田天骨)、中野今日子(草乃)
・~2006年6月10日まで、自由劇場。その後、名古屋公演アリ。
公式サイト

四季のストレートプレイを見るのは2回目でありまする。
生前の三島と親交のあった浅利慶太演出による「鹿鳴館」。
今回の四季の舞台は、従来、杉村春子や水谷八重子といったスター女優のための芝居だった「鹿鳴館」を、三島のセリフを聞かせることに重点をおいて作られたらしい。それだけに、さすがに個々のセリフは聞き取りやすかった。三島の書いた演劇作品は基本的にセリフ劇であり、セリフを観客にキチンと届けるということは何よりも重要なことだ。

だが。
ある種の三島戯曲は、上演する必要がないのではないか?極端な話、戯曲を読むか、CDで聞けばよいのではないか?舞台を見ながら、そんな感想を持ってしまった。舞台芸術である限り、何らかの視覚的な喜びや驚きがほしい。要は劇的ではなかったということだ。
三島戯曲自体のはらむ問題なのか-「サド侯爵夫人」ですら、そんな感想をもつことがある。だが、「近代能楽集」の舞台は総じて面白いのだから-、それとも演出の問題なのか。
ともかく、このたびの「鹿鳴館」。観るヨロコビがあまり満足させられないまま、幕が閉じてしまったのが残念。

もちろんセットはなかなかに豪華。大輪の菊や離れの壁画は美しいし、鹿鳴館の大階段やシャンデリアも重厚だった。
だが、舞台の動きが問題。私が最も納得がいかなかったのは、第二幕(三島戯曲の第三・四幕)の鹿鳴館の夜会での舞踏シーンが全くなかったこと。

舞踏会が始まると着飾った貴顕淑女たちが踊る。その後、影山が仕組んだ騒擾を経て、ラストシーンでは踊りの輪の中に影山・朝子も入って踊る、と、ト書きでもはっきりと指示されている。
ところが、生身の役者によって踊られることは全くなく、舞踏シーンはすべて、背景に幻燈のような子供だましの影絵が映されることで処理されるのだ。これはひどい。

この芝居の要諦は、互いの関係の欺瞞性に気付いた夫婦による、そして朝子が影山との別れを決意したことによる、夫婦としての最後のダンスにあるだろう。
虚飾に満ちた夫婦関係を決算するための、最初で最後のダンス。その最中に、朝子がこれから共に生きようと願った清原の暗殺を暗示する銃声が響き、影山はそれを花火の音だとごまかす。観客は、息子と愛人を亡くした朝子の今後の寂寥を、銃声と花火の二重写しに予感せざるをえないのだが、それが鹿鳴館の一見華やかなダンスに対照されるところが、作品の妙なのだ。
にもかかわらず、ミュージカルを得意とする劇団四季の「鹿鳴館」公演で、役者による舞踏会シーンがないとは!  自由劇場というストレードプレイ用の小さな劇場だった制約はあるにせよ、ここはやはり、華麗なステップで観客を魅了してほしかった。ただ影山と朝子が舞台中央に立って対峙するのでは、動きがなく、重すぎる。

他にも、全体に華やかさ・軽やかさに欠けていた。
三島演劇だからと、格調高くしすぎたのではないか。

例えば衣裳。例の「サド侯爵夫人」みたくぶっとばなくてもよいが、もう少し、華やぎや遊び心があってもよい。
森英恵の衣裳は、上質なものであることはよーくわかるのだが、上品すぎて地味。他の登場人物たちがほめちぎるほど、朝子がオーラを発する特別な女性に見えてこないのが、つらい。いくら看板女優芝居を目指さなかったとはいえ、照明も、もっともっときれいに、彼女が光るように、当てることができたのではないか。

また、売りであったはずのセリフの朗誦についても、不満がある。
テンポが遅すぎるのも気になったのだが、役者によってセリフのトーンが違いすぎて、全体の統一がとれていなかった。
中で、スピードや感情の乗り具合など最もよかったのは、野村玲子の朝子。だが、他の役者陣が、そのトーンとかみ合わず、アンサンブルの悪さが気になった。

・・とここまで、辛口に書いてきたが、よかったのは、影山の懐刀でアウトサイダーな飛田と、朝子の腹心でありながら影山に籠絡されて裏切る草乃。
『豊饒の海』の蓼科もそうだが、三島はこういった一癖ある人物を作らせると、実にうまい。役者にとっても、美味しい役所だ。

また、2回目のカーテンコールで、三島の若き日の(ちょうど「鹿鳴館」を書いていた時期の書斎での)写真が吊り下げられていたのを見て、さすがに後の「喜びの琴」事件などの四季と三島との関わりを想起させられて、感慨深かった。

色々不満も書いたけど、ともかく膨大なセリフによって組み立てられた三島の詩的な演劇世界を、確実に伝えていた。劇団四季によって、三島の代表戯曲が上演されたことは、やはり意義のあることだった、と思いたい。

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