最近の三島つれづれ
「三島由紀夫:米滞在の江藤淳に書簡 ノーベル賞も意識?」(毎日新聞2006.3.16)によれば、三島の江藤淳あて書簡5点が、「4月に刊行される「決定版 三島由紀夫全集」(新潮社)別巻の月報に収録される」とのこと。
あいかわらず新潮社さん、全集販売前の宣伝がうまいなあ、と感心する。いよいよ来月で決定版全集も完結。
この4月刊行の全集最終巻は幻の映画『憂国』DVDなわけだけど、先日、DVDの『憂国』の案内も届いて、どうやら東宝からも販売されるようす。つまり、新潮社の全集版と東宝のと、2種類の『憂国』DVDが4月に発売されるわけで、そうなると気になるのは中身。
元のネガプリントが一つだから本編自体は同じはずだけど、映像特典などDVDの内容が同じなのか違うのか、いま一つよくわからない。
全集の定期購読をしていた生協から、別巻も購入するか?と確認されて、もちろん買うと返事はしたのものの、東宝版との違いが激しく気になるなあ。
もう一つ。佐藤幹夫『村上春樹の隣には三島由紀夫がいつもいる。』を読了。
なんだか内容がすべてわかりそうなタイトルだけど、村上春樹と三島由紀夫の関係の指摘の清新さということで言えば、久居つばきの『ねじまき鳥の探し方』の方が数段上だと思う。久居本では、『ねじまき鳥クロニクル』と『豊饒の海』の相関(本田と本多など)など、ハッとさせられた印象が今でも大きい。
太宰-三島にせよ、三島-春樹にせよ、大筋ではやはり関係があると思うのだけど、佐藤本のように細かいところ全てツジツマあわせようとするとすると無理が生じてしまう。「1973年のピンボール」の1973年は「第一次三島由紀夫全集の刊行が始まる年」だから、「ピンボールは三島由紀夫の表象」という箇所を読んで、思わず本を落っことしそうになりましたよ。いちおう最後まで読みましたけど。
春樹には、謎解きに血道をあげたくなっちゃう何か(斎藤美奈子言うところの「ハルキ・クエスト」)があるんだろうなあ。
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三島由紀夫映画祭2006 「その目で、心で 衝撃と対峙せよ」
・場所:キネカ大森
・期間:2006年4月8日~5月12日
・上映作品:16作品
『憂国』(ニュープリント上映)
『炎上』『永すぎた春』『不道徳教育講座』『潮騒54年』『剣』 『からっ風野郎』『お嬢さん』『潮騒71年』『複雑な彼』『肉体の学校』『愛の渇き』『黒蜥蝪/大映』『黒蜥蝪/松竹』『音楽』『潮騒75年』
・期間中、数回のイベントが予定されているようです。
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NAGI様のこの記事を読んで三島由紀夫映画祭に行ってきました。感想書かせていただきました。有難うございます。
投稿: 佐藤秀 | 2006/04/09 22:21
佐藤秀さま、コメント&TBありがとうございます。
二つとも未見なのでうらやましく拝読しました。トークショーのレポもありがたいことでした。
「憂国」は、DVD発売まであと少し。とは言え、映画はやはり大画面で見たいですよね。
投稿: NAGI | 2006/04/10 11:09