NODA・MAP「贋作・罪と罰」
久々のNODA・MAP公演。
メモだけしていてなかなか手直しできず。大幅に遅れたけど、見た記録にこそっとアップ。
・大阪公演:2006年2月6日~2月18日
・シアターBRAVA!
・脚本・演出・出演:野田秀樹
・出演:松たか子、古田新太、段田安則、宇梶剛士、美波、マギー、右近健一、小松和重、村岡希美、中村まこと、進藤健太郎
⇒公式ページ
江戸開成所の女塾生・三条英(松たか子)は、「人間はすべて凡人と非凡人との2つの範疇に分かたれ、非凡人はその行動によって歴史に新しい時代をもたらす。そして、それによって人類の幸福に貢献するのだから、既成の道徳法律を踏み越える権利がある」という、確固たる思想があった。その思想に突き動かされ、かねてからの計画通り英は、金貸しの老婆殺害を実行に移してしまう。しかし、偶然そこに居合わせた老婆の妹までも手にかけてしまう。この予定外の殺人が、英の思想を揺さぶり、心に重い石を抱かせることに……。
殺人事件の担当捜査官・都司之助(段田安則)は、事件の確信犯的な性質を見抜き、次第に英に対して疑惑の目を向け始める。それに気づいた英は、都の仕掛ける執拗な心理戦を懸命にしのごうとする。一方、英の親友・才谷梅太郎(古田新太)は、罪の意識に苛まれ苦しむ英の異変に気づき、その身を案ずるが、才谷もまた、同時代の、より大きな歴史的事件の渦中にいたのだった。
1867年、夏。時あたかも尊王倒幕の機運高まる幕末の真っ只中、「ええじゃないか」踊りが江戸市中を埋め尽くす。新しい時代を目前に、無血革命を目指す、坂本竜馬。竜馬の密通を疑い、武装蜂起を煽る志士たち。永遠の命題がよみがえる革命前夜、ついに三条英が心のうちを語りはじめるのだが……。(e+特集ページ)
メッセージ性の強い作品だった。思想のために人を殺すこと自体よりも、「その後」を描こうとしている。
英の松たか子は、セリフが聞き取りやすく、声にはりつめた透明性があってよい。ただ、人を殺すパッションのようなものが稀薄だった。
野田さんは、声がつぶれていてやや聞き取りがたし。でも、野田・段田の二人が同じ舞台にいるのを見るだけで満足ですよ。
菱形の舞台の両側に観客席があって、いつもなら舞台の側から芝居を見るという面白い体験。
役者は出番がないときにも演じないときにも舞台袖の椅子に坐っていて、始終見られているのはキツイだろう。
しかし、観客と出演者の距離が近いのは、とても嬉しい。
芝居の始まる前に、パンフ冒頭の野田さんの文章に、周囲の物音が聞こえないくらい集中した。学生時代に、学生運動の内ゲバによる殺人を至近距離で見たという体験が書かれたもので、それ自体は以前にも読んだように思うのだけど。
言葉の力、体験の喚起力はさすがだ。
劇の最後にかかったローエングリン前奏曲が耳について離れず、ずっとiPodで聞きながら帰広した。
![]() |
解散後全劇作 野田 秀樹 新潮社 1998-03 by G-Tools |
« 「プライドと偏見」 | トップページ | 予餞会 »
この記事へのコメントは終了しました。
« 「プライドと偏見」 | トップページ | 予餞会 »
コメント