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2006/02/22

コミック版「春の雪」

そういうわけで娘と競争で(完全に負けてますが・・(^_^;)セッセといただきものの漫画を読んでいるところなのだが、平行して、ようやくコミック版の『春の雪』を読了。

連載は昨年秋。帯によれば「「週刊女性」連載コミックに大幅加筆、ついに単行本化!!」だそう。(原作:三島由紀夫、脚本・構成:池田理代子、画:宮本えりか)。
映画よりも原作に忠実で、ダイジェスト版としても使えそう。

清顕-聡子を軸に、原作のストーリーに沿ってきれいに展開しているし、心情の説明も丁寧。映画版とちがって、本多が剣道部なんて設定ではないし、夢の場面がヘンに幻想風に描かれることもない。清顕の黒子(ほくろ)も本多が見ており、続編を期待できる作り。

映画では脚本家が涙をのんでカットしたという清顕付の書生・飯沼も、コミック版ではしっかり登場。ただし、巻末の「池田理代子特別インタビュー」で、三島の飯沼の描き方は「少し不当だと思われるので、あえて彼を素敵に、ちょっと坂本竜馬風に描いてみました」とあるように、バンカラなけっこういい男として描かれている。私は飯沼はもっとモッサリしている感じだと思うけど。

絵の方は、イマ風のコミックとは違っていて、クラシカルな雰囲気。
清顕がちょっと大人顔すぎるかな。妻夫木くんの顔に影響されたのかもしれないけど、私のイメージでは清顕は美形だけど、もう少し少年の趣もあっていいと思う。
ともかく全体に格調高く作りました、て雰囲気ですね。深みがある、とは言えないけど、背景も含めて、丁寧に描かれていることは伝わる。

また、コミックの帯に「妻夫木聡×竹内結子主演映画『春の雪』とコラボレーション!」と謳われているように、映画の構成や構図を生かしている箇所も散見された。
冒頭、少年・少女時代の清顕・聡子のカルタの場面と綾倉伯爵と蓼科の密約の場面から入ったり(コミックは、さらにその前に雪の日の接吻が置かれるけど)、清顕の祖母の家の雰囲気なども映画の絵の構図をもらっている様子。おそらく事前に映画を見たか、少なくとも脚本を読んで、作ったのでしょうね。
原作を含めて、三位一体の売り出し方というわけでせうか。

いやあ、それにしても、映画化されたし、コミックも出たし。『豊饒の海』フリークとして贅沢言わせてもらうと、もちろん映画の続編を期待したいわけですが、『春の雪』二次創作に限れば、次は、舞台(以前のものなら、三島の生前からあったわけだけど)かテレビドラマがあるとよいですなあ。
その節には、清顕は松潤(または藤原竜也)、聡子には田中美里か松たか子でぜひとも!?(しつこい)

さて、この本、発売翌日に近くの大きな本屋のマンガコーナーに出かけたものの、見つけられず。店員に検索してもらっても、「池田理代子の「春の雪」というタイトルでは見つからない、発売延期ではないか」と言われて、すごすごと帰宅。
結局、アマゾンで買いましたよ。なるべく地場の本屋を利用したいのだけどなあ・・。(コミックにしてはやや大判だし、表紙もとてもクラシカルだし(セピアっぽい写真)、もしかして一般書の階に置かれていたのだろうか・・)。

4391131994 春の雪
三島由紀夫  池田理代子  宮本えりか
主婦と生活社  2006-02

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コメント

至高のボクシングライターにしてベンヤミンを講ずる慶応大学ドイツ語教師 粂川麻里生さんの「春の雪」評です。
「私が考える「春の雪」キャステイング」、爆笑(特に蓼科)。

http://blog.goo.ne.jp/mario1101/e/9b63fe34c93bdda018e11c3e4de95680
http://blog.goo.ne.jp/mario1101/e/2a5370d2697a40d7ff584ff8b60f0d7c

小説はもちろんコミックやアニメも、実写化に際して、原作ヲタから称賛されることはまずなくて、スタッフも役者さんも、ご苦労なことだと思います。
「卒塔婆小町」の老婆=小町もそうだけど、蓼科など、三島の描く怪婆は男優が合うのでしょうか。でも、映画の大楠さんはよかったと思いますが。

三島はお婆さんの描写が一番合いますからね。実際一番生き生きしている。

この映画は三島論ではないから三島の偽物ぶりを描けないのはしかたない。スタッフは妥協をしたはずだから。いろんな制約の中で最大限努力をしたはずです。

漫画でも声優が合わないとかいろいろ言われますからね。ルパンの山田康雄さんとかドラえもんの大山のぶ代さんは希有な例。

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