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2006/02/19

「クラウディアからの手紙」

「他人の不幸の上に自分の幸せを築くことは、私にはできません」
──クラウディアの言葉が心に響く。
こんなセリフのとおりに行動できる人が、どれだけいるだろうか。

戦争と戦後の社会態勢による過酷な運命に翻弄されつづけた男と女二人。
無実の罪によりシベリアに抑留され、戦後50年以上、帰国を許されなかった日本人男性。男を待ちながら日本で生き続けた妻。ロシアで37年間、妻として男を支えつづけ、男の日本帰国へと動いたロシア人女性。

実話をもとに、ドキュメンタリーのように構築された演劇世界は、人を翻弄する戦争や政治体制の不条理と人の心の暖かさとを訴えかけていく。
重く暗くなりがちな、逆に、安直なお涙頂戴になりがちなテーマを、演劇ならではの表現でまとめあげた佳作。
鐘下さんの芝居で、見終わったあと、こんなにスッキリした気分になったのは初めてかも・・。

・2006年2月17日(金)18:30-  (休憩を含め約3時間)
・広島郵便貯金ホール
・脚本・演出:鐘下辰男
・出演:佐々木蔵之介(蜂谷弥三郎)、斉藤由貴(クラウディア)、高橋惠子(久子)ほか
公式ページ、  公式ブログ
⇒村尾靖子『クラウディア 奇蹟の愛
このあと3月1日まで、福岡、名古屋、北九州、仙台公演アリ

棒状のドラとサイドカー、理髪店の椅子以外にはほとんど小道具もない、シンプルな舞台。
ときおり鳴らされるドラの音に観客は驚かされ、常に見張られ、緊張を強いられる弥三郎の心理を追体験させられる。

佐々木蔵之介は、ほとんど出ずっぱりで、細い身体が、弥三郎になりきっていた。高橋惠子の和服姿は日本で待つ女を象徴していたが、役柄的に影が薄かったのはやむをえないか。斉藤由貴は、ふくよかな包容力のあるクラウディアをよく体現していた。クラウディア登場以前にも、体調のよくない弥三郎が、万に一つの幸運と知恵で生き抜いていくときに、ガラスを与えるなどの幸運の女神として象徴的に出てきていたのも、この芝居ならではの面白い使い方だった。

すまけいらが固有名詞をもった人物として登場するほか、数人のグループが何役もの役柄を演じる。出征兵士の見送りや、戦時中の朝鮮半島での仕事の日本人同僚、シベリアで収容された日本人、ロシア人の看守や近所の人たち。自分や家族以外は、自分を監視する他者としてしか感じられないということか。

ネタバレになるけど、最後にクラウディアの尽力によって弥三郎が日本に戻り、久子と50年ぶりに再会して抱き合ったところで、舞台には、現実の弥三郎さんと久子さんの再会のテレビ映像が流される。
これは評価が分かれるところかもしれないけれど、一人の男と二人の女の長きにわたる苦闘の物語が、フィクションではなく現実だったのだということを、どうしても観客に提示したかったのだだろう。

脚本・演出の鐘下さんは、「弟の戦争」の際に、戦争の悪や悲惨さを単なる知識として知るのではなく、演劇によってナマのものとして感じてほしいと話していた。観客は、ドラの音にビクつき、映像によって弥三郎・久子・クラウディアが現実に生きていること・これまで見てきた芝居が現実のものであることを実感させられる。

舞台全体が(とくに前半は)ドキュメンタリー的な作りだったことも、同様の狙いなのだろう。ナレーターの解説といい、あたかも再現映像のような構成によって、これが実話であることを常に観客に意識させようとしていた。
また、流された映像がテレビ画面のものであったことも印象的だ。
マスメディアはとかく悪者視されがちだが、クラウディアからの手紙のできごとが知られたのはドキュメンタリー番組の力による。メディアが出来事を発掘し、広げることで、大きな力になりうることを評価している。

映像の中で、再会した弥三郎さんは久子さんを抱きしめ、何度も顔にキスしていた。80代の日本人カップルがあまり見せないロシアナイズされた抱擁の仕方に、弥三郎さんが数十年をロシアで過ごしてきたのだ、ということが伝わってきた。
また、何よりよかったし救われたのは、弥三郎さんと久子さん、弥三郎さんとクラウディアさん、二人ずつが写っている写真が、いずれもみんな笑顔だったこと。でも、この笑顔に至るまでの苦しさの歴史を忘れてはいけないのだけれど。

佐々木蔵之介さん目当ての若いお姉さんが多いだろうという予想は大きくはずれ、年配の方々や家族連れが多かった。演劇公演としては、あまりない客層だった。

ところで、開演ギリギリに駆けつけて、終演後にパンフレットを買おうと思ったものの売り切れてしまっていたのだけど、公式ブログによれば通信販売があるようです。
他の観客が持ってたけっこう厚めのパンフをうらやましく眺めたので欲しい!  しかし送料がかかるんだなあ・・・。

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