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« 第29回広島近代文学研究会 | トップページ | 水無月 »

2005/05/15

映画「阿修羅城の瞳」

監督:滝田洋二郎
出演:市川染五郎(病葉出門)、宮沢りえ(つばき)、安倍邪空(渡部篤郎)、樋口可南子(美惨)、内藤剛志(国成延行)、小日向文世(四世鶴屋南北)

ゲキシネのアカドクロのとき、特典の手鏡に惹かれて前売り券を買っていたのに、午前と深夜の2回上演となり、そろそろ公開も終わりに近づきつつあるようで、ちょっと焦りながら見に行った映画版の「阿修羅城の瞳」(於・バルト11)。
前売券を座席券と引き換えた時には、まだ全席空いていて、ど真ん中の席を確保。その後、上演開始ギリギリに二人の客が入ってきたのだが、いずれも私より後方の席だったので、全く視界を遮るものがなくスクリーンを独占。観劇条件としては最高だった。

が、映画自体の印象は、うーん。。
私は2003年版の劇団☆新感線公演の「阿修羅城の瞳」の大阪松竹座の大楽を観たことがある。(このときは、昼は阿修羅城、夜はスタジオ・ライフの「Lilies」、と二つの大楽をハシゴするというとっても贅沢な一日だった)。総立ちの観客と、長期公演を演じきった喜びいっぱいの役者の間のなんとも幸福な一体感が忘れられず、どうしても演劇版と映画とを比較してしまったのかもしれない。

主演は、両作とも市川染五郎。
だが、演劇版に出てきた桜姫(高田聖子さま!)や祓刀斎も省かれて、映画版は、出門、つばき、美惨、邪空の四者の関係とそれを垣間見る南北に整理され、なかんづく出門とつばきのラブストーリーに筋を集約していた。演劇にあった混沌とした祝祭的空間を整理したのは、それが好きだった者にとっては残念だけど、映画制作の上ではやむをえないだろう。

だが、根本的な問題は、この作品は、演劇的想像力によって成立する世界を扱っていたのではないかということだ。そうした演劇的世界を映像化することで、かなり陳腐になってしまったように思えるのだ。

たとえば、阿修羅となったつばきは、3面菩薩の頭像に化す。人の背丈以上の頭をCGによって見せるわけだが、大きくて身じろぎもしない宮沢りえの頭だけのCG化されたアップを見ていると、 なんだか色々と雑念が入ってくる。頭を固定して動かないように撮影したんだろうなあ、 なんて想像したり、西遊記のお釈迦様=高峰三枝子の姿(堺正章が孫悟空、夏目雅子が三蔵法師だったドラマね。ゴダイゴ、懐かしい!)などが唐突に思い浮かんだり。とにかく雑念が入って、おかしくてたまらず、とてもとても神聖かつ恐ろしき阿修羅には見えないのだ。
このキモとなる場面で観客に滑稽感を味あわせちまうようでは、作品としてはどうしようもない。

奇しくも宮沢りえが出演した「父と暮せば」でも書いたけど、基本的には、映画は映像を見せてなんぼの世界だから、その映像がリアルでないと観客はしらけるばかりだ。観客の想像力によって、いくらでも無いものを見せることのできる演劇の世界とは違う。
その点で、阿修羅城の世界観は、演劇的想像力の産物として、観客のイメージの世界にこそ浮かぶことのできるものではないだろうか。

また、演劇ではさほど気にならないのに、映画だと、役者がアップになるたびに、その役者の別の配役のイメージが浮かんできて、現に見ているスクリーンの役柄イメージを壊してしまう。

たとえば、内藤剛志が出るたびに、「is.A」の苦悩するまじめな父親役をやっていたときの内藤剛志が思い浮かんで、鬼御門の頭領としての扮装が仮装に見えて仕方なくなる。
すぐれた役者は何本もの出演作をもち、さまざまな傾向の役を演じる。露出度の高い役者を使えば使うほど、過去の作品のイメージの残像が強く二重写しとなってしまう。
これまた、「阿修羅城の瞳」のように独特の時代・感性を扱っている作品にとっては、そのイメージを壊す、かなり苦しい観劇体験を観客に強いることになる。

そういった点を除けば(・・て、致命的な気もするけど)、役者はよかったと思う。演劇版との比較は、完全に好みの問題になりそう。
染五郎については、もう言うことなし。出門は、完全にあなたの役です!
つばきは、宮沢りえはかわいらしく、私は天海祐希の方が、殺陣の力量はむろんのこと、男気が感じられて好き。でも、染五郎との対でいえば宮沢りえの方がよかったかも。
邪空は、演劇版の伊原剛志の方が野性的な凄味があって私は好きだけど、これまた完全に好みの問題としか言えず、渡部篤郎はニヒルなこわれ方をしていて、かなりよかった。
美惨は、夏木マリも迫力があったけど、樋口可南子がさすがのクールかつ妖艶さを示していてたまらない。

また、金比羅の金丸座で染五郎が歌舞伎を演じるシーンを劇中で見られる・・・なんてのも、やはり映画にしかできないこと。華やか、かつ贅沢でございました。

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コメント

コメントありがとうございます。
演劇臭は残るものの、役者で見られる
日本映画というのもこの頃少ないので
もっとこういう映画が出てきたら
面白いと思ったのも事実です。

たしかに、役者はよかったですよね。
ただ、「阿修羅城・・」では、中途半端に演劇的世界を映画化してしまったのが残念です。もっと映画にふさわしい素材がありそうですし、演劇の世界を見るならば、イーオシバイのゲキシネのような方向が出てきていますしね。。

こちらこそ、コメントありがとうございました!

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