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2005/01/08

映画「山猫」

新潟帰省中、シネ・ウインドにて、ルキーノ・ヴィスコンティの「山猫」(イタリア語・完全復元版)を観た。
上映時間3時間6分。
出演:バート・ランカスター(サリーナ公爵)、アラン・ドロン(公爵の甥・タンクレディ)、クラウディア・カルディナーレ(アンジェリカ)
音楽:ニーノ・ロータ

1860年、大きく時代が動き始めたイタリア・シチリア島が舞台。永きにわたって統治してきたサリーナ公爵家の当主、旧体制の象徴であったドン・ファブリツィオの新しい時代への身の処し方と、新時代を体現する甥・タンクレディ、新しい血を示すアンジェリカを軸に展開。華麗だった旧時代の変質・滅びの予感が底に流れる。

主役のランカスターの威風堂々たる風格。役者に限らず、いまやこんな顔を見ることはできない。時代によって、人の顔が甘っちょろいものになってしまったのだろう。ドロンの美貌もたたずまいも素晴らしい。
ただ、カルディナーレの舌なめずりは、上流階級にはない粗野な魅力を示すのに何度も使われるのだが、今の感覚からみるとちとやりすぎかな。

最初は3時間も耐えられるか、、とおそれていたけど、公爵の最後のワルツとその後の終りの意識へと収斂させていく構成はすさまじい。延々とつづく舞踏会のシーンは、やはり必要だったのだと思う。独特の美意識に裏打ちされながら、時代と社会と個とが描かれる、厚みのある作品だ。

ところで、購入したパンフに秦早穗子「ある日のヴィスコンティを探して」という記事が。

   11世紀から続くといわれるミラノの貴族ヴィスコンティ・ディ・モドローネ公爵夫妻の四番目にうまれたルキーノ・ヴィスコンティ (1906~1976)は、音楽や馬を愛し、広くて深い教養と見識をもち、かつ貴族で類いまれな才能と財力に恵まれていた。同時に、赤い公爵といわれ(長男ではない彼の身分は正確には伯爵だ)、レジスタンスの闘士だったのは、衆知の事実である。そこには美しい男たちを愛するという伝説も付加されていたが、私的部分をおおっぴらにするには、当時の社会、人々はお互いに、まだ節度を持っていた。かつてシャネルやマリア・カラスがヴィスコンティに憧れたのは、彼女たちがこの側面を見抜けないほど、壮年の彼は凛としていたのだろう。勿論、ヴィスコンティの作品は年を経るほどに禁色の影を深め、不可欠な要素ではあるが、日本において彼の全世界を理解出来得たのは、三島由紀夫ぐらいだろうと思う。

貴族性・同性愛といった要素で、すぐに三島を引き合いに出すのはステレオタイプな発想のような気もするけど、たしかに滅びや独特の美的世界など、三島の世界にかなり通ずるところも。

ただ、山内由紀人編『三島由紀夫映画論集成』の索引によれば、ヴィスコンティについて三島が触れているのは、「地獄に堕ちた勇者ども」のみで、冒頭から「久々に傑作といえる映画を見た。生涯忘れがたい映画作品の一つになろう。/この荘重にして暗鬱、耽美的にして醜怪、形容を絶するような高度の映画作品を見たあとでは、大ていの映画は歯ごたえのないものになってしまうにちがいない。」と絶賛。
アラン・ドロンについては、『第一の性』の中で、ドロンの「ナルシスト」「同性愛の噂」について、かなり紙数を割いて書いている。「ドロンの美貌に恵まれたら、男にはここまでナルシスムに徹底する能力がある」なんて、ホントそうだなあ。『鏡子の家』の収を思い起こさせるところだ。(ポール・シュレイダーの映画「MISHIMA」の作中劇「鏡子の家」では、収役は沢田研二で、和製(古い!)ドロンといった感じで、まさに適役だった)。

三島は「山猫」を観たのかどうか、日本初演の昭和39年1月のあたりの評論や、安藤武『三島由紀夫「日録」』などをあたっても見当たらない。観てなかったのかなあ。
もっとも初演のときには、舞踏会部分をバッサリ切って161分の短縮版での公開だったというから、少々味気なかっただろうけど。でも、三島の「山猫」評を読んでみたかったなあ。。

名作と言われていても、見ていない映画があまりに多い。やはり、ビデオじゃなく映画館で見たいものだ……けど、そんなこと言ってると、今の広島では古い映画を見るのは難しい。
ちなみに、「山猫」(イタリア語・完全復元版)は、広島サロンシネマでも、3月に公開予定(3/12~3/25)。

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コメント

たいへん恐縮ながら、自己コメント。
Bekabekkaさんから、「「山猫」に無名時代のジュリアーノ・ジェンマが出てたんじゃなかったっけ、昔持ってたジェンマの写真集に載っていた覚えがある」、との連絡をもらった。
「山猫」のパンフのキャスト表を見てみると、たしかに、「ガリバルディ軍の将軍」役で「ジュリアーノ・ジェンマ」の名が! わー、知ってたら、もっとよく注意して見ていたのに。。戦闘場面で、メインストーリーとは全然からまないにもかかわらず、赤い服きた美青年がやたら出ていた場面があったように覚えているけど、もしかしてあれだったのかな。(他にも、色々な美青年がチョイ役で、あちこちの場面にやたら出ていた映画だった)。

それにしても、ジェンマ。Bekabekkaさんも「超懐かしい」と書いてたけど、姉妹そろってなぜかカブれてた時期があった。なんでジェンマだったのだろう?
しかし、ジェンマはまだいい。ここにはとても書けないような、今となっては名前をあげるのも恥ずかしいような人に、かなり浮かれていた姉妹なのであった。(姉妹それぞれ別々の役者・歌手だったけど)。あー、思い出しても汗が出てくる、青春のこっぱずかしい思い出。。

ヴィスコンティ作品、人気投票を設定してみました。
どうぞご興味のある方、一票&コメントをお願いします。

こんにちは。投票しに行ったのですが、ダメでした。
コメント欄に記入して「投稿」を押したのですが、「エラーが発生しました。処理中にタイムアウトが発生したか、不正な経路での入力の可能性があります。」のメッセージが出てしまいます。
時間帯の問題なのかもしれませんが、外部からは書込できないようですよ。

「山猫」に一票!のつもりだったのですが・・。
上のエントリーにも書いた、三島由紀夫絶賛の「地獄に堕ちた勇者ども」も私は観てなくて・・。観たい映画は数多けれど、、です。

はじめまして、トム(Tom5k)と申します。
はずかしながらTBさせていただきました。

わたしはアラン・ドロンファンですが、彼の作品は三島由紀夫氏も絶賛していたようです。

トムさん、こんにちは。
トラックバック&コメント、ありがとうございます。こちらからもトラバさせていただきます!

貴族階級を演じた役者のそれまでのイメージとの乖離に関するご考察など、厚みのある映画評で、たいへん興味深く拝読しました。

こちらこそ、ありがとうございました。
ヴィスコンティが長男でないため、公爵ではなく、正確には伯爵であることは、こちらにお邪魔して始めて知りました。

三島由紀夫は、学生時代に光クラブをモデルにした『青の時代』を読み、強烈に印象に残っています。どうもわたしには、今のIT業界の若手経営者たちと結びついてしまいます。
あとは、いいだ・ももの『三島由紀夫』を読みましたが、ほとんど内容は記憶になく、こちらにお邪魔し、再読しようかと思っているところです。

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この記事へのトラックバック一覧です: 映画「山猫」:

» ヴィスコンティ「山猫」を観る〜PC版 [言語学研究室日誌]
ヴィスコンティ『山猫』の感想です。 [続きを読む]

» 『山猫』~映画においては、すべての人間の言いぶんが正しい~ [時代の情景]
 わたしはルキノ・ヴィスコンティ監督の映画における知性は、彼が若いころにジャン・ルノワール監督の助監督をしていた時代の影響が大きかったのではないかと推測しています。ルノワール作品『ゲームの規則』には「映画においては、すべての人間の言いぶんが正しい。」とのセリフがあり、これはヴィスコンティ作品の悲劇の土台となっている思想ではないかと思われるのです。「が正しい」という言葉を「をすべて認める」と読み替えるとよくわかります。 ゲームの規則 / 紀伊國屋書店  彼の作品はすべて、新... [続きを読む]

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