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2004/12/13

「ハウルの動く城」(2) ハウル

ハウルの「動く城」は、もちろんハウルそのものを表しているのだろう。
羅針盤が指す色によって、港町、王宮のある都市、湖やお花畑、、、と扉は異なった場所に人を送りだし、建物の外観も異なっている。人はさまざまな役割を演じ、自らの技能を切り売りしながら生きていく。

そして羅針盤が黒色を指したときの出口の場所だけは、「ハウルさんにしかわからない」。
動く城はてんでバラバラな素材が何層にも積み重なり、雑多なものをツギハギにくっつけて作られているが、黒の出口では、素の姿のまま荒地を蹌踉と進んでいく。
(4本足の城は、目や尻尾みたいのもくっついているし、動物的。宮沢賢治が「修羅」っていったような、ハウル自身なのだろうな)。
まだ自己が何者なのかを知らず、卓越した技量をもてあまし才能を浪費しながら、悪に近づき、もがく。粗削りな強さと弱さを併せもったハウルの軌跡そのものが、ハウルの動く城なのだ。
火であるカルシファーを心臓に、マルクルはハウルの幼い人間としての側面の具現であり、そういった気に入ったものだけに囲まれて、しかし満ち足りることなく、ハウルの城は荒地を動いていく。

まったく整理されることなくゴタゴタだった城が(つまり彼の内面の混沌が)きれいにソフィーによって掃除され、髪色を染めるのに失敗し、すなわち(ハンサムで女たらしの魔法使いとしての)外界に見せる仮面をうまくつけることができなくなったハウルは、ぐずぐずに溶けてしまう。強大な力をもつサリマン先生を恐れ、幼児回帰願望を表すような玩具や呪術具であふれかえっている自室に横たわり、ソフィーにとどまっていてほしいと頼むハウルは、素のままの姿をさらけ出している。

(ちょっとこのあたり、太宰治が書くような、「私が守ってあげなくっちゃ」と思わせる、なんというか女性が持っていると思わされている「母性本能」(もちろんカギカッコつき)を絶妙にくすぐるダメ男ぶりだ。太宰が描く男の場合には、「女性本能」を本能的にみせかけて作為的に利用しているわけだが、ハウルの場合には素のままの弱さをさらけ出している、とひとまず思いたい。
そして、颯爽とし、かつ弱さをさらけ出すハウルの二面を、木村拓哉の声はうまく体現している。
何といっても、「初夢のこともあろうにキムタクと (黛まどか)」なーんていう句ができるくらいの彼自身のイメージも、観客がハウル像を形成するのには大きく寄与しているだろうけど)。

ともかく、ハウルは、ソフィーによって、自らを見つめる方向へ確実に変わっている。
また、結末に向かい、ソフィーの決意によって一度カルシファーを城から出して一度城の動きを停めたあとあたりからは、ゴタゴタとした城は虚飾をはぎおとし、最終的には、イカダのような小さな木の床だけになる。
そこへソフィーを連れてハウルは戻っていく。マルクル、魔力を抜かれて恍惚としてしまった魔女、ヒン、カブとともに、そしてカルシファーも戻ってくる場面は、原始家族の趣。ノアの方舟とはちょっとちがうかもしれないけど、コンチキ号だのウホッホ探検隊だの(これも違うか?)、なんていうかイカダみたいなものは、最小限の装備で一人・あるいは親しい者たちとともに進路を切り開いていく、そうした凛々しい冒険者の物語を喚起させる力がある。
繊細な魂をおおう鎧のような混沌をすべてはぎとったあとの、本当にミニマムな姿は美しい。

だが、仙人や隠者じゃあるまいし、もちろんそうした最小限のシンプルな場だけで長い人生を過ごしていくことはできない。人のなかの種々の側面を伸ばし慰安するために、豊かな巣は必要だ。
最後に、もういちどさまざまなものを積み上げて、ハウルの動く城は再生する。若いハウルの生の安寧を示すかのように、
広場や、緑あふれる、明るい城となって。

「ハウルの動く城」
「ハウルの動く城」(3)ソフィー

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