『キリクと魔女』
おやこ劇場ひろしま(こんどNPO法人になって、「子どもコミュニティネットひろしま」という名前になるらしい。おぼえられない・・)の特別企画で、映画『キリクと魔女』を観る。
去年の夏、日本公開にジブリの高畑勲が関わったというアニメ映画。
魔女カラバによって苦しめられているアフリカの村に生れた、キリクという男の子の冒険譚。途中まで、「男の子が老賢者に助言をもらって悪い女を倒し、人々を助けてヒーローになる」という物語の王道として展開。まるでユング心理学的な男の子の成長物語そのもので、ジェンダー的にはいかがなものか?? ナウシカとかトトロとか、女の子の物語を作っていたジブリが、なぜこの映画に関わったのか??などと思いつつ、見ていた。
が、途中から思わぬ展開。魔女の背中のトゲを抜いたキリクは、魔力から解放されたカラバに求婚する。そして、半信半疑のカラバから口づけを受けるや、みるみる大きくなって好青年になる。
村に戻った二人を快くは迎えなかった村人たちだが、老賢者が、魔女に食べられたと思っていた男たちを連れ戻したことにより、二人は祝福されて物語終了。
古今東西、悪い魔女や妖怪はやっつけられて終わりだと思っていたので、この展開には、ちょっと驚く。
何だろう。
魔女の苦痛をヒーローが取り除き、女の口づけによってヒーローは成人になる。
カラバの背中に刺さったトゲは、もちろん心理的・肉体的な傷の象徴だろう。トゲが刺さった場面、短くてハッキリとわからなかったのだが、男たちにとり囲まれていたようだったので、女性が(性的に)男性に苦しめられた喩なのか。魔女と恐れられた女を、癒す男。そのことにより男も成長する。もともと、キリクは、なぜカラバが悪いことをするのか、その深層を気にしていた。
DVや慰安婦などの男性の性を含み持った暴力によって傷つけられる女、女の憎しみ。それを癒すことのできる男。そのことによって成長する男。……といった感じなのかなあ。
異性愛神話なところは気になるけれど、原型的な物語が、単に悪女を成敗する話ではないのは興味深い。
カラバの声は浅野温子だったというのも驚きだが、アフリカ調の音楽とあいまって、とくに後半1/3ぐらいから単純な「子ども向きの映画」ではなくなっていった気がする。
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