奈良:『豊饒の海』の舞台
三島由紀夫の遺作『豊饒の海』の作中の寺や神社のモデルが奈良にある。
まず、綾倉聡子が剃髪し、のちに門跡となった月修寺のモデルが円照寺。
奈良市郊外の田園地帯、「大和は国のまほろば・・・」なんていう野田秀樹のセリフが聞こえてきそうなのどかな場所から、田の中の道を入っていく。
秋とはいえ、日がカッと照って、暑い。
田園にススキがゆれ、近所の子どもたちが遊ぶ声が聞こえる。
清顕が、本多が、歩いた道。
このあたりから少しずつ情緒は出てくるが、熱に冒された清顕が懸命に上るような、「登攀」のイメージはなく、なだらかな道が続く。
夏ならば両側の木立からさぞかし蝉時雨れが聞こえるのだろうな。
田んぼ道が暑かったので、木立に入ってシンとした空気がとても気持ちよい。
いよいよ円照寺の門に到着。
門には「圓照寺門跡」の筆書きの表札がかかる。
しばらく門の中に入らず、門の外側からの景観を楽しむ。
古く、でも新しい、いかにも歴史ある尼寺の風情が好ましい。
拝観を許可しておらず、中を見せていただけないのが、本当に残念。
清顕が訪ねたときのように、正面の障子はピタリと閉まっていた。
お庭を拝見したかったなあ。
でも、見せていただけないからこそ、ゆかしくなるのだろう。
一方、奈良市内、JR・近鉄両奈良駅からすぐ近くにある率川神社(いざがわじんじゃ)。
三輪明神・大神神社(おおみわじんじゃ)の摂社で、奈良市最古の神社。
『豊饒の海』第二巻『奔馬』の主人公である飯沼勲や鬼頭槇子が信仰し、百合の花は重要な要素となる。
毎年6月に行われる百合の三枝祭に参列したいと思った。
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